病院での尿失禁・尿漏れの診察、検査・診断、治療の流れは?

病院での尿失禁の診察

病院での尿失禁の診断では、まず尿失禁の程度を確認すること、続いて尿失禁の病態・原因を把握するための問診が行われます。

考えられる尿失禁の病態に合わせて検査・診断を進められます。

病院での尿失禁の診察・検査・診断

診察・検査・診断

病院で行われる可能性のある尿漏れ、失禁の問診、診察、検査の種類を解説します。

問診

問診では、尿失禁の症状について、①いつから(期間)、②どのように(切迫性、腹圧性)、③どれくらいの量の(重症度)、尿失禁があるのかを正確に伝えることが大切です。

また、尿失禁以外の下部尿路症状、手術歴・治療歴(骨盤内手術の有無、放射線治療の有無など)、内服している薬剤の種類、尿失禁の治療歴などについても問診で確認されます。

診察

一般的な診察として、神経学的異常の有無、認知機能、日常生活動作障害の有無について診察が行われます。

腹部の診察では、膀胱の膨隆など臓器異常の有無について確認されます。直腸診を含む会陰部の診察の際は、男性では前立腺の異常など、女性では尿道の動性、骨盤内臓器の下垂の有無などについて確認されます。

膀胱に尿がたまっている際には、咳や下腹部の圧迫により尿失禁の有無を直接確認します。場合によって、スクリーニングとしてエコー検査も行い、膀胱充満や変形の有無、水腎症の有無について確認します。

検尿

スクリーニングとして血尿(尿路感染症、がん、結石)、尿糖(多尿による尿失禁)、膿尿、細菌尿などの有無を確認されることがあります。異常がある場合には、各疾患の精密検査や加療を行います。

残尿測定

残尿測定を行うことがあります。排尿後に下腹部からの超音波検査を用いて残尿量を測定します。溢流性尿失禁では、多量の残尿を認めます。

尿流動態検査 

非侵襲的な検査である尿流測定では、排尿障害について確認します。尿失禁の原因の確定や尿失禁の重症度の検索、難治性尿失禁の原因検索を行います。

切迫性尿失禁に排尿筋過活動の関与や、溢流性尿失禁における排尿筋収縮力の低下、腹圧性尿失禁における尿が漏れる瞬間の圧や尿道の状態が分かります。また、尿道内圧測定では、腹圧性尿失禁における尿道抵抗の関与を検査します。

画像診断

腹圧性尿失禁の際に、腹圧上昇時に膀胱頸部の可動性が増加することがあるため、チェーン膀胱造影や最近ではエコー検査を用いて、腹圧上昇時の膀胱頸部下垂の程度を画像診断で検査することがあります。

尿漏れ・失禁治療の流れ

尿漏れ・失禁治療の流れ

行動療法

尿失禁は、生活習慣を変えるだけで症状が改善することが少なくありません。

多飲多尿は尿失禁の症状を悪化させますので、排尿日誌のデ一タから適切な飲水量を指導します。時間排尿は尿失禁の症状を改善します。特に機能性尿失禁では、排尿日誌をもとにした時間ごとの誘導排尿や、着脱しやすい衣類の着用も有効です。

逆に、腹圧性尿失禁や切迫性尿失禁では少しずつ排尿間隔を延長し、最終的には2〜3時間の排尿間隔を得られるようにする膀胱訓練も効果があります。骨盤底筋体操など骨盤底筋リハビリテーシヨンを持続的に行うことによって、腹圧性尿失禁や切迫性尿失禁が改善します。

 排尿日誌

一般的には起床時から翌日の起床時までの24時間における排尿時間、排尿量、失禁時間、失禁量(パッドの重さで測定)および飲水量を3〜5日間、本人(または介護者)に記録してもらいます。

失禁のタイプや重症度の診断に有用であり、飲水・排尿パターンから、飲水制限とそのタイミング設定、時間排尿誘導の時間設定などにも重要な情報を得ることができます。

薬物療法

腹圧性尿失禁では、α1受容体刺激薬やβ2受容体刺激薬が用いられることがあります。

切迫性尿失禁では、抗コリン薬が有効で頻用されます。ただし、ロ渴・便秘などの副作用も高頻度で認められますので注意が必要です。

新しい過活動膀胱に対する治療薬であるβ3受容体刺激薬の使用が可能となり、新しい切迫性尿失禁に対する治療薬として期待されます。

溢流性尿失禁の原因の一つである低活動膀胱でコリン作動薬を用いることがありますが、その効果の程度は不明です。

排尿管理

排尿障害による溢流性尿失禁では、間欠導尿による排尿管理を行うことで症状は改善します。

外科的手術

外科的手術

酷い尿漏れ・失禁があり、原因が特定できれば、外科手術が行われることもあります。

以下に排尿障害の手術の種類を紹介します。

尿道スリング手術

尿道スリング手術は腹圧性尿失禁の治療の主流となっています。

以前は、筋膜を用いて行っていましたが、現在は人工物である特殊なメッシュテープを用いて尿道を下から支え、お腹に力が入ったときの尿失禁を防ぎます。恥骨の後面にテープを通すTVT法と閉鎖孔を通すTOT法が行われています。

人工尿道括約筋埋め込み術

前立腺手術後や神経因性膀胱などの尿道括約筋不全による高度の尿失禁の際に、尿道の周りにシリコン製のチューブ(人工尿道括約筋)を巻き付け、その中に液体を充填することで尿道を圧迫し手術、尿失禁を治療します。

現在日本での保険適用はありませんが、高度先進医療として限られた施設で施行されております。

人工括約筋の機能不全などの合併症が問題点としてありますが、概ね良い結果が出ています。

内視鏡的尿道周囲注入手術

日本では行われていない手術ですが、ご紹介します。内視鏡的尿道周囲注入手術は膀胱頸部・近位尿道粘膜下に専用の製剤を注入し、膀胱頸部・近位尿道の密着を図るもので、腹圧性尿失禁のうち尿道括約筋不全症例を対象とします。

欧米では施行されていますが、残念ながら日本では注入用製剤の認可がないため現在は施行
することができません。近い将来の認可が期待されます。

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