寝ているときに何度もトイレに行く「夜間頻尿」の原因と対策は?

夜間頻尿

寝ている間にトイレに行きたくなり目が覚めるという場合があります。

これを「夜間頻尿」といいます。

夜間頻尿は男女ともに高齢になるほど増加します。最近の調査では、50代では約60%、80代では実に90%以上の人が夜間に一回以上トイレに行くと答えています。

それでは夜間頻尿はなぜ起こるのでしょうか?

夜間頻尿の原因はさまざま

場合によっては若くても夜間頻尿に悩まされる場合があります。

以下に夜間頻尿を引き起こす原因をあげていきます。

寝ている間に作られる尿の量が多い

単純に、寝ている間に作られる尿の量が多いことが考えられます。

これを夜間多尿といいます。

1日のうち35%以上が夜間に出る状態、あるいは体重1キロあたり10ミリリットル(体重50キロなら500ミリリットル)よりも多く尿が出る状態などが判断の目安となります。

寝ている間に作られる尿の量が普段よりも増えれば、トイレに行く回数も同時に増えることになります。

原因は年をとるにしたがって、心臓や腎臓の機能が低下することがあげられます。

若いころはじゅうぶんに機能していた心臓や腎臓も、年齡とともにそのはたらきが弱まります。

そのため、全身の活動量が多い昼間は、 必要な量の尿を作るところまで力がまわらなくなってしまうのです。

そこで、やむをえず活動量が少ない夜間にかけて、尿が作られることになります。これは、心不全や腎不全の軽いものともいえます。

また年をとると、尿の量を減らす抗利尿ホルモンが十分に分泌されないようになります。これらの事情が重なって、健康な高齢者であっても、夜間の尿量が増える傾向にあるのです。

薬(降圧薬)の影響

薬(降圧薬)の影響での夜間頻尿

服用している薬の影響で、 尿の量が増える場合もあります。

高血圧に使われる降圧薬や心臓病に使われる強心剤には、尿の出をよくするはたらき(利尿作用)があります。

これが、夜間頻尿の原因となる場合があるのです。このような場合には、一度かかりつけのお医者さんに相談してみましよう。

薬の飲み方を変えることによって、寝ている問に尿がたくさん作られすぎないように調整し、夜間のトイレの回数を減らすことができるかもしれません。

主な降圧薬の分類と代表的な商品名

分類 商品名
利尿薬   フルイトラン、ラシックス、オイテンシン、アルダクトンAなど
βブロッカー インデラル、ミケラン、テノーミン、カルビスケン、メインテ一ト、セロケン、セレクト—ルなど
αブロッカー ミニプレス、パソメット、デタント一ル、エブランチル、カルデナリンなど
αβブロッカー ベトリロ一ル、アーチスト、ロ一ガン、アルマ一ルなど
カルシウム括抗薬 アダラ一ト、ペルジピン、ニパジール、カルスロット、ヒポ力、パイミカ一ド、コニ一ル、アムロジン、セパミット、ヘルべッサ一など
ACE(アンジオテンシン変換酵素)阻害薬 カブトリル、セタプリル、アデカット、チパセン、 ロンゲス、タナトリル、コナン、レニベース、インヒベース、エースコール、コバシルなど
AⅡ (アンジオテンシンⅡ)受容体拮抗薬 ニューロタン、ブロプレス、ディオバンなど

※注意・・・あくまで一部の薬なので、他にも降圧薬は多くあります。

水分のとりすぎ

水分の摂りすぎでの夜間頻尿

単純に、お茶などの水分をとりすぎていることが頻尿の原因になっている場合もあります。

特に自宅に長くいる女性や高齢者では、少なくありません。しかし、本人はあまりそう思っていないことも多いのです。

思い当たるふしがあるようでしたら、一日の尿の量をはかってみるとよいかもしれません。成人の場合、1日に1〜1.5リットルの尿が出れば、水分はじゅうぶんとれているといえます。

ところが、中には2リットル、ときには3リットルもの尿をしてる人がいます。

こうした人たちでは、水分のとり方を変えるだけで夜間頻尿が改善されます。

また、糖尿病の患者さんでは糖分が尿に出るときに水分も一緒になって出るので、夜間の尿量が増える場合もあります。

水の飲み過ぎで頻尿になってる?頻尿と水分補給の関係

過活動膀胱による夜間頻尿

夜間に尿量が增える、3つの原因を紹介してきましたが、治瘵にとりかかる前に確認しておきたいのは「本当に夜間多尿かどうか」ということです。

思い込みで水分制限をしたり、薬の飲み方を勝手に変えたりすると、 かえって身体に害を与えてしまいます。

過活動膀胱

1回で出る尿の量が少ないと、トイレの回数が増えます。

1回のトイレで出る尿の量が少なければ、そのぶん何度もトイレに通わなくてはならなくなります。

1回に出る尿の量が減る理由には、膀胱の機能異常である「過活動膀胱」や、尿が出し切れないで残尿が多い状態、膀胱が小さくなってしまった状態などがあげられます。

過活動膀胱では、膀胱の筋肉の活動が異常に活発になり、 尿をためているときに突然トイレに行きたくなってしまって我慢できない、またしょっちゅうトイレに行きたくなる、悪化すると尿漏れを起こしてしまう、といった症状がみられます。
 
この過活動膀胱が夜間頻尿を引き起こすことがよくあります。

過活動膀胱はさまざまな原因によって起こります。たとえば、脳出血や脳こうそくなどの脳血管障害が原因で、排尿をコントロ—ルする神経がうまくはたらかなくなっている場合です。

また中高年の男性では、前立腺肥大症が過活動膀胱の原因となっている場合があります。

このほかに、原因のはっきりしない特発性の過活動膀胱などがあります。

残尿が原因の夜間頻尿

前立腺肥大症や糖尿病による神経障害を起こした膀胱では尿が出し切れない状態となります。すると、1回あたりに出せる尿の量が減ってしまうので、結果的にはトイレが近くなります。

また、前立腺肥大症では過活動膀胱を併発することもありますし、糖尿病では夜間の尿量が増えたり、心臓や腎臓の機能が落ちていたりするために、いっそう夜間頻尿がひどくなります。

脳血管障害や他の神経系の病気でも同じように、残尿が多くなることがあります。

小さくなった膀胱と夜間頻尿

膀胱が小さくなったために、ためられる尿の量が減って、夜間頻尿が起こることもあります。
膀胱が小さくなる原因として、1つには病気によって萎縮してしまう場合が考えられます。

最近は非常に少なくなりましたが、膀胱結核では膀胱が小さくなってしまいます。

また、長い間の細菌感染や炎症で膀胱の炎症が続いた場合にも、膀胱壁の組織が引きつれて固くなり、膀胱そのものが小さくなることがあります。

加齢でも同じような変化が少しずつ起こってきますので、年をとると膀胱はだんだん小さくなるようです。

さらに、何らかの理由で膀胱の一部を切り取る手術を受けた場合には、膀胱の容量が少なくなってしまうので、頻尿の原因となります。

睡眠のトラブルでの夜間頻尿

睡眠のトラブルでの夜間頻尿

実際にはトイレに行きたくて起きたのではなく、目が覚めてしまったのでトイレに行ったことを、夜間頻尿だと思い込んでいる場合もあります。

眠りが浅い、夜寝ている間に起きてしまうといった睡眠のトラブルが原因です。

寝室が寒い、うるさい、心配ごとがある、などの要因に思い当たることはないでしょうか?

本人は夜中に起きたついでにトイレに行っているだけなのですが、尿意で目が覚めていると思 い込んでしまうのです。

このような場合には、排尿にトラブルがないことを確認したうえで、自然な睡眠リズムが取り戻せるように生活を見直してみましょう。

昼間にウォーキングや軽い体操などを行うことで睡眠が深くなり、夜間のトイレの回数が減ることも確認されていますので、ぜひお勧めしたいと思います。

一般にお年寄りは睡眠が浅くなりがちです。その原因のーつとして、メラトニンという睡眠を誘う物質の量が、年をとると減ってくることがあげられます。

夕方の体操や昼間に陽に当たるなどの習慣が、良い睡眠を手伝ってくれます。それでもよくが覚めてしまう人は、軽い入眠薬や抗不安薬を試してみるのも悪くないでしょう。

「夜だけ頻尿」の原因としての睡眠時無呼吸症候群

「夜だけ頻尿」の原因になる病気のうち、心不全以外に命にかかわる病気で、睡眠時無呼吸症候群があるというのは案外知られていません。

睡眠時に舌根が気道をふさいでしまうと胸腔内気圧が低くなって心臓がふくらみます。すると血流が心臓に増え、多くなり過ぎた血液を処理するために夜間尿が増えるということになります。

睡眠時無呼吸の例

60代半ばの男性は、やせ型で糖尿病も高血圧もないのに脳霊を起こした。原因として睡眠時無呼吸症候群が怪しいというので、機械を付けて夜間の睡眠をモニターしてみたら3分55秒も呼吸が止まっていたときがあったという。SAO2という酸素濃度も、正常てあれば97〜98であるところが70台まで低下していた。そんなに長く呼吸が止まってしまうと、交感神経が夜間でも優位に働き出し、血圧が上昇し、血液 の粘性も高くなって脳梗塞や心筋梗塞を起こしやすい状態となる。

これまでは睡眠時無呼吸症候群は、うんと太った首の短い体型の人に起きる問題だと思われていました。しかしあごの小さい人も鼻の悪い人も舌根が落ちて寝ていることが多いらしく、閉経後の女性も女性ホルモンのエストロゲンが減ると、上半身が肥満になりやすいので気をつけるべきです。

いびきは自分ではわかりません。家人に言われて、はじめてわかることもあります。

もし睡眠時無呼吸症候群という診断がついたら、CPAPという機械を装着したり、歯科で舌根が落ちないようなマウスピースを作ってもらって治療したりします。しかしCPAPはマスクを装着するので、苦しくて使えない人もいるし、マウスピースもうまくロの形に合わせるのに何回か修正は必要というように手間がかかります。

てっとり早いのは、寝るときは仰向けにならず、 体を横向きになるようにして舌根が落ちない工夫をすれば改善することもあります。ですがこれも抱き枕などをうまく利用しないと、いつのまにか仰向けで寝ていたりするので、なかなかむずかしいかもしれません。

とにかく、睡眠時無呼吸症候群の疑いがあれば、一度病院で診断を受けるべきです。

高齢者に夜間頻尿が多いのはどうして?

高齢者では、自然な変化として内臓機能の低下や膀胱の萎縮などが起こり、夜間の尿量を減らしたり、たくさんの尿をためたりすることができない状態になっています。

加えて、睡眠が浅くなったり、排尿のトラブルを招くさまざまな疾患を合わせもっている場合が多くあります。

前立腺肥大症や脳血管障害などの病気による直接の影響はもちろんですが、高血圧や心臓病の薬による間接的な影響もあります。

さらには水分や塩分のとりすぎや、眠りが浅い、など、生活習慣や生活環境も夜間のトイレの回数を増やしてしまう原因になります。

このように、高齢者の夜間頻尿は、複数の原因が重なって引き起こされている場合が多いといえます。

1つ1つの原因をつきとめて、適切な治療を行うことが大切です。

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