脊髄損傷などの脊髓障害があると尿のトラブルが起こりやすくなります。
過活動膀胱による尿漏れや頻尿、また、反対に尿が出にくくなることもある排尿障害もあります。
過活動膀胱等の尿トラブルを起こす神経の病気の代表的なものとして、脊髓損傷、多発性硬化症、脊椎変性疾患があります。
目次
排尿トラブルを起こす3つの脊髄障害
脊髓損傷
外傷などによって、脊髓が損傷を受けた状態です。脊髓損傷の急性期には、神経のはたらきは消失するために膀胱は完全に休止し、たまった尿を出すことができない状態、いわゆる「尿閉」となります。
その後、排尿が可能となることもありますが、神経の回復が不完全であると、過活動膀胱による尿失禁が問題となることがあります。
多発性硬化症
脊髓や脳などの中枢神経に炎症が生じる病気で、時に過活動膀胱となることがあります。
通常、再発と寛解(症状が軽快しだ状態)を繰り返しながら、少しずつ中枢神経の障害が進行します。
脊椎変性疾患
脊椎は頭や体を支える役割と、脊椎の中を通る脊髓を保護する重要な役割があります。
しかし、加齢によって脊椎や椎間板の変性が生じ、脊髄が圧迫・障害され、過活動膀胱が生じることがあります。一般的には、頸椎症性脊髓症、腰部脊椎管狭窄症、椎間板へルニア、後縦靭帯骨化症、黄色勒帯骨化症などが代表的な病気として挙げられます。
脊髄障害と排尿障害
蓄尿(尿をためる)と排尿(尿を出す)に関係した下部尿路(膀胱、尿道)は、自律神経である①骨盤神経(副交感神経)と②下腹神経(交感神経)、体性神経である③陰部神経の3つの神経支配を受けています。
普段、私たちが何気なく行っている蓄尿と排尿は、これらの3つの神経と、脊髓や脳といった中枢神経を含んだ神経回路を介して行われています。
この神経回路の一部に何らかの異常が生じると、蓄尿と排尿のバランスが崩れて、「急に尿がしたくなる」、「尿が漏れる」、「うまく尿が出せない」といった蓄尿障害、排尿障害が生じます。
過活動膀胱の原因の一つに脊髓障害がありますが、それはこの神経回路の障害により生じます。過活動膀胱として現れる場合は、薬物療法が主となります。
排尿困難
排尿困難では、残尿の程度により清潔間欠的導尿(CIC)や尿道力テ一テル、膀胱瘻などが選択されます。
全身状態の保護を考えて、可能であれば間欠導尿がいちばん好ましいのですが、環境によってはその他の手段が選ばれます。
たとえば、両手が使える場合、自己導尿の訓練を行います。両手が不自由な場合は、家族など周囲の協力者がいて、間欠的に導尿を依頼することができればその方法を選択します。
どちらも無理な場合は、膀胱瘻も選択肢ですが、膀胱瘻は下腹部から直接膀胱へカテーテルを入れるために、抵抗を感じる場合も少なくなぐ比較をすると尿道に留置されている場合が多いようです。
しかし、膀胱瘻は下腹部に固定されるので、尿道が温存できること、いつでも膀胱や尿道機能の評価ができることなどのメリットがあります。
しかしカテーテルが抜けた場合、すみやかに医療受診しないとすぐに膀胱瘻が閉じてしまったり、交換のたびに出血したりすることがあります。尿道カテーテルは尿道狭窄などがなければ、女性は簡単です。各々に合わせて方法を選択します。
脊髄損傷などの脊髓障害に伴う過活動膀胱の検査
脊髄損傷などの脊髓障害に伴う過活動膀胱の場合、膀胱や尿道のはたらきに高度の異常を疑うことが多くみられます。
適切な治療を行わないと、尿失禁などが改善しないばかりか、尿路感染症や腎機能障害など重大な合併症を併発することがあります。
ウロダイナミクス検査
ウロダイナミクス検査は、膀胱や尿道のはたらきを直接知ることができる重要な検査です。
そのほか、腎臓や膀胱の状態を調べる超音波検査もよく行われます。ウロタダイナミクス検査には、検査の目的や方法によりさまざまな種類があります。
比較的簡便なものには、排尿した時刻やその時の排尿量、尿失禁の状況などを記載する排尿日誌、尿の勢いや残尿を調べる尿流測定検査や残尿測定検査があります。
また、膀胱や尿道の異常は圧力の異常としてとらえることができるため、膀胱や室腸などに力テーテル(細い管)を入れて、圧力を測定する検査も行われます。
脊髄損傷等の脊髓障害に伴う過活動膀胱の場合、さまざまな合併症や高度の尿失禁を伴うケースも少なくありません。決して楽な検査ではありませんが、適切な治療を行う上で、ウロダイナミクス検査は大変重要な検査となります。
過活動膀胱の検査
- 排尿日誌(排尿した時刻、1回排尿量、排尿回数、失禁回数など)
- 超音波検査(膀胱壁の厚さ、膀胱の形態、水腎症の有無)
- ウロダイナミクス検査
①尿流測定・残尿測定検査
②膀胱内圧測定検査(尿道カテーテルの挿入)
③内圧流量検査(尿道カテーテル*直腸力テ一テル挿入)
④その他(外尿道括約筋筋電図検査(針電極挿入)、ビデオウロダイナミクス検査(尿道カテーテル・直腸力テ一テル挿入、レントゲン))
脊髓障害に伴う主な合併症
脊髓障害に伴って合併症が生じることもあります。
これらの合併症は、場合によっては生命予後に関わることもあり、それを予防することが脊髓障害における治療の基本となります。そのため、排尿日誌や超音波検査、ウロダイナミクス検査により、障害の状況や程度を正確に知る必要があります。
また、治療の経過中に状況が悪化するケースもあるため、これらの検査を定期的に繰り返し行うこともあります。
主な合併症
- 尿路・性器感染症(急性腎盂腎炎、精巣上体炎など)
- 上部尿路障害(水腎症、膀胱尿管逆流症など)
- 腎機能障害
脊髄損傷は排便障害も
脊髄損傷の場合は排尿障害だけではなく、排便障害もしばしば現れます。
排便障害の症状
①便意を感じにくい、または感じない
②便意を感じても排出困難がある
③便が直腸まで降りてこない
排便障害があった場合は、泌尿器科の他、消化器科の診察を受けることができます。
ただ、脊髄損傷の場合、排便障害について相談する窓口がすくないことと、医療者の認識が薄いことにより、排便コントロールは充実していません。
今後、脊髄損傷のほとんどの人が、泌尿器科の診察を受けているように、消化器の診察を受けやすくするような、医師や看護師への意識づけや、相談窓口の普及が求められています。
脊髓障害に伴う過活動膀胱は薬物治療が中心
脊髓障害に伴う過活動膀胱の場合、適切な排尿管理を行うことが最も重要です。排尿障害がある場合、前述の合併症を起こすことが多いため、まず排尿障害の対処を行い、尿道周囲の筋肉の緊張を改善させるα1受容体遮断薬を内服します。
高度な例では、1日数回、尿道からカテーテルを入れて膀胱内の尿を排出する「間欠導尿」を行う必要があります。間欠導尿は、時間ごとにカテーテル操作を行わなければならないために、時として負担に感じることがあるかもしれません。しかし排尿障害がある場合は、その対処をまず行わなければ過活動膀胱の症状は改善しません。
抗コリン薬
脊髓障害に伴う蓄尿障害としての過活動膀胱の治療には、主に抗コリン薬の投与が行われます。
脊髓障害の患者さんの場合、排尿筋過活動(膀胱の痙攣)が過活動膀胱の原因となっていることがあり、抗コリン薬は有効な薬剤です。
ただし、抗コリン薬はロ渴、便秘、目のかすみなどの副作用が現れることがあります。また、脊髓障害による過活動膀胱の場合、内服しなければならない抗コリン薬の量が多くなることがあります。そのため、時として薬の内服を途中で止めてしまうケースがあります。
まずは、処方された薬をきちんと内服し、もし不都合が生じた場合は主治医に相談してください。最近は、副作用の少ない抗コリン薬も出てきているので自分に合った薬剤を服用することが大切です。
抗コリン薬による薬物療法で効果が得られない場合は、抗コリン薬以外の薬物療法をはじめ、ボツリヌストキシンの膀胱壁内注入療法、カプサイシンやレジニフェラトキシンの膀胱内注入療法、電気や磁気による刺激療法、外科的治療などが専門の施設で行われることがあります。
これらの治療は、日本ではまだ保険診療が未認可の治療法も含まれていますので、主治医とよく相談のうえ、治療方針を決める必要があります。
比較的副作用の少ない漢方薬
抗コリン薬の他に、漢方薬が使われることもあります。西洋薬の抗コリン薬と比べて、副作用が少ないことが漢方薬の特徴です。
八味地黄丸
尿トラブルに効果があると認められている漢方薬で有名なのが、「八味地黄丸」という生薬の組み合わせです。
その名の通り、8種類の生薬で作られるこの漢方薬は、体を温め、体全体の機能低下に元に戻していく処方です。腎のはたらきを良くする生薬として、新陳代謝機能を高めて主に中年以降の治療薬として効果があるとされています。
ご参考までに、インターネットで手に入る八味地黄丸の中で、特に人気のある商品をご紹介します。
【生漢煎 八味地黄丸】
八味地黄丸にもいくつかのメーカーがありますが、一番人気は株式会社アインファーマシーズ(東証一部上場のアインホールディングス)が製造、販売する【生漢煎 八味地黄丸】です。
【生漢煎 八味地黄丸】は質の良い生薬のみを使用し、粉薬でなく丸薬にすることで飲みやすいということも特徴です。
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