更年期女性の尿漏れの8割は腹圧性失禁。更年期障害による尿漏れの原因と対策とは?

更年期や閉経後の尿漏れや夜間頻尿

更年期障害での尿漏れ
更年期の世代や閉経後の排尿の不具合を訴える女性のなかには、

尿意切迫や夜間頻尿などが日に何回も問題になるものの、パッドに少ししみるだけで酷い尿漏れはない人、

または、実際に切迫感とともに少量の尿漏れがみられるものの腹圧性尿失禁にも膀胱機能障害や神経障害による尿漏れとも診断できない人などさまざまです。

このような尿路症状はこれまで、膀胱や尿道の加齢変化、更年期や閉経によるエストロゲン欠乏による尿道や膣の血行不良や硬化性変化、将来的な尿失禁を恐れる神経症的な反応、または性格的な問題などさまざまな説明がされてきました。

女性下部尿路症

これら尿失禁でも排尿困難でもない自覚的な下部尿路の不具合症例をとりあえず「女性下部尿路症」とまとめようという声があります。

女性下部尿路症に分類される患者は、しきりに「尿がもれる」「尿の回数が多い」ということを訴え、排尿記録ではしばしば頻尿や夜間頻尿が観察されるものの、一般にウロダイナミクスや尿のパッドテストなどの病院での客観的な検査では排尿障害の原因が不明のものです。

閉経後や更年期に多いのがこの女性下部尿路症です。

更年期の尿漏れで病院を受診したUさんの体験談

全身倦怠感

Uさんは48歳。尿漏れに悩む更年期世代の専業主婦のお話です。

24歳と22歳の子供たちはすでに独立しています。会社社長の夫は、ただの同居人としての関係。経済的には恵まれているが、張りのない生活に嫌気がさしていました。

「全身倦怠感」を訴えて内科を受診した彼女は、スリムな身体を質のよいスーツで包んでいて、何も心配ごとはなさそうに見えた。生理は不規則で、この3力月は来ていないと言います。

典型的な「更年期障害」の患者さんでした。楚々とした容姿、かぼそい話し方、かばってあげたくなるような女らしいしぐさの持ち主の彼女は、いま、さまざまな不定愁訴に悩まされていました。「1番、つらい症状は何ですか?」という医者の問いに、Uさんはほおを赤らめながら、小さな声で言いました。

腹圧性失禁

「あのー、くしゃみをしたりすると、おしっこが漏れるんです。少し前からなんですが、
誰にも相談できなくて、すごく恥ずかしかったのですが…。」

「あなたのような、華奢な身体つきで、お子さんを産んだことがある方は、更年期になると、女性ホルモンの分泌が減るために、膀胱の粘膜や括約筋、骨盤の下のほうの筋肉が衰えてしまって、失禁しやすくなる(腹圧性失禁)のですよ。恥ずかしいことではありません。50歳代の女性の二人に一人は、経験するのだそうです。皆さん、はっきりとはおっしゃいませんが、悩んでいる女性が多いですよ」「大丈夫です。骨盤の筋肉トレーニングを毎日十分やって項いて、それで駄目なら、いろいろお薬もありますから、まずは試してみましょう」

と、その医者は慰めました。

様々な更年期障害の症状に悩むSさんの体験談

尿漏れ以外にも更年期障害の症状

更年期世代のSさんは、尿漏れ以外にもいろいろな症状に悩まされていました。

疲れやすい、肩凝り、頭痛、イライラするなどを病院で訴えていたので、加味逍遥散が処方され、様子を見ることになりました。

一力月後、彼女の自覚症状はかなり軽くなり、尿失禁もほとんど気にならなくなったといいます。

婦人科検診は、お産のとき以来やっていないとの話だったので、念の為、近くの総合病院にかかるよう、紹介状を書いてもらいました。

しばらくして、総合病院のドクターの診断で、彼女には卵巣に腫瘍があり、これによる膀胱への圧迫で尿失禁が起こっていたことが分かりました。

ただの腹圧性失禁か?と、あやうく見逃すところだったと、初めに診察した医者は胸をなでおろしました。その後、彼女は手術を受け、卵巣腫瘍は幸いにも良性で、癌の恐れはないといいます。

手術後、Uさんの経過観察は、しばらくは総合病院の更年期外来で診ていくことになりました。

更年期世代の尿失禁の80パーセント以上が腹圧性

お腹膨らませ体操

更年期世代の女性の尿失禁は、80パーセント以上が咳やくしゃみで腹圧が加わった時に漏れる腹圧性尿失禁であるのに対して、60歳以上の老年期の世代では、尿意を覚えるとトイレまで我慢できず漏らしてしまう切迫性尿失禁の割り合いが増加してきます。

尿失禁の発症には、老化・出産経験・肥満が誘発因子としてあげられるので、予防するには、前述した骨盤底筋訓練の指導や、ダイエットの勧めが必要でしょう。

放っておいても、命に関わるほどのものじゃないけれど、尿失禁は、生活の質をひどく悪化させる悩みの一つといえます。

もし、あなたが密かに「お漏らし」でお悩みなら、毎日10分のトレーニングをしてみてもらいたい。2週間から1力月で、かなりの改善が得られるはずです。

腹圧性の尿失禁を防ぐ体操

「尿失禁を防ぐ体操」(骨盤底筋肉を引き締める骨盤底体操)は、次のように行います。

  1. 仰向けに寝て、両足を開き、膝を立てる。お腹の力を抜いたまま、肛門と膣を身体のなかへ引き込むつもりで骨盤底筋を締め(かんぬき動作)、11~14秒間こらえる。
  2. 仰向けの体勢のまま、かんぬき動作を行いながら、ゆっくりと身体の前で、両膝をつけたり、両側に大きく離したりする。
  3. 軽く足を開いて立ち、かんぬき動作を行う。かんぬき動作を続けたままで、ゆつくりと腰を落とし、しゃがみ込む。

腹圧性以外の頻尿・失禁や尿意切迫の治療・対策

閉経後 頻尿

腹圧性尿失禁でなく、尿のパッドテストが陰性(当てているパッドが重くならない、または、パッドを使用しない)である閉経後の女性患者でしかも尿検査が正常所見である場合、頻尿や尿意切迫などの症状はいわゆる女性下部尿路症に類する症候であることが多いです。

そのような場合は以下のような対策が取られます。

①飲んでいる薬の見直し

閉経後や更年期世代の女性で膀胱収縮力を落とす医薬品を服用しているようならば、減らすか変更します。

以下が頻尿や尿漏れ、尿意切迫などの症状が出る下部尿路症の原因になる医薬品のリストです。

頻尿や尿漏れの原因になる薬

薬効

薬品の種類

代表的な商品名

降圧薬・抗狭心症薬

カルシウム拮抗薬

アダラート、ノルバスク、ペルジピン等

抗不安薬

ベンゾジアゼピン

デパス、リーゼ、ソラナックス等

抗うつ薬

モノアミン取り込み阻害薬

ルジオミール、トフラニール等

抗アレルギー薬

抗ヒスタミン薬

ポララミン、アタラックス等

漢方薬

麻黄を含む製剤

葛根湯、小青竜湯、麻黄湯等

気管支拡張薬

キサンチン誘導体β刺激薬

テオドール、ユニフィル等ベネトリン、メプチン等

風邪薬

総合感冒薬

ダンリッチ等

整腸薬

抗コリン薬

トランコロン、マロゲン等

②性ホルモン補充(HRT)

エストラジオールパッチ剤もしくは経口の結合型エストロゲンで性ホルモン補充(HRT)を行います。

性ホルモン補充の際は、乳癌や乳腺症などが問題になっていないか、性器出血がないか、子宮癌検診はしているかといった事柄をチェックして行います。

一般に、エストロゲン補充の効果がでるのには、3力月くらいかかることが普通です。

性ホルモン補充(HRT)は頻尿や尿漏れなどの尿トラブルだけでなく、閉経後や更年期障害の治療にも使われます。

③α遮断薬

効果と血圧をみながらα遮断薬を服用します。

また、α遮断薬の効果が概ね判定できるようになるのは、7〜10日服用した後です。

頻尿や尿漏れが続く場合は

内科でこれらの治療を行って経過観察を経ても、頻尿や尿漏れ、尿意切迫などの排尿の障害が続く場合には、いったん内科診療を中断して泌尿器科や産婦人科などを受診しましょう。

更年期世代や閉経した後は女性ホルモンの不安定が原因で尿トラブルが起きやすい状態です。しっかり対策をしていきましょう。

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