残尿感は、排尿後にもかかわらず、尿が残った感覚があることをいいます。残尿や残尿感は、年齢・性別による影響を受けます。
約100mLの残尿があると、尿路感染症や、残尿が逆流することでの腎機能障害を生じることがあるので注意が必要です。
目次
残尿・残尿感があったら確認すること
- 残尿の有無と残尿量を観察する
- 排尿間隔、排尿回数、尿の性状、排尿痛や排尿困難の有無、尿漏れの有無・回数などを観察する
- 心理的ストレスの有無を観察する
- 加齢変化による排泄機能の影響を考慮する
- 残尿・残尿感を生じる病気の有無を確認する
- 服用している薬剤の作用・副作用について確認する
残尿・残尿感を生じる原因と症状
残尿感は、心理的な影響によって生じることもあります。
残尿感があると頻回にトイレに行きたくなるので、疲労感を増すこともあります。
加齢が原因の残尿感
女性の場合、加齢による骨盤底筋群の筋力低下によって生じることがあります。
男性の場合、加齢により前立腺が肥大することで生じることがあります。
病気が原因の残尿感
尿道の通過障害や膀胱の収縮障害などの症状を生じる前立腺肥大や、神経因性膀胱などによって生じることがあります。
脳梗塞などの後遺症による中枢神経系の障害によって生じることがあります。
排尿方法が原因の残尿感
腹圧をかけにくい姿勢(臥床状態など)での排尿は、残尿を生じることがあります。ADL(日常生活動作)低下予防の面からも、床上排泄ではなく、可能であれば腹圧をかけやすい座位姿勢での排尿をおすすめします。
残尿や残尿感があることで、尿漏れや頻尿を起こし、さらに、残尿感を生じるという悪循環を起こすことがあります。
残尿がある場合の対応
残尿・残尿感に加え尿漏れや頻尿がみられる場合は、携帯型超音波膀胱容量測定装置などを用いて、残尿量を測定します。
残尿量が約100mL以上であれば、尿路感染症や腎機能障害などの病気の可能性もあるので、医師に相談して治療を開始する必要が出てきます。
残尿感があることで、尿路感染症を起こしやすいです。特に女性は、尿道の長さが男性に比べて短く、エストロゲンの産生低下による膣の自浄作用の低下が起こるので、注意する必要が必要です。
溢流性尿失禁
尿の排出障害により多量の残尿が生じ、それがあふれるように漏れることを溢流性尿失禁といいます。
溢流性尿失禁を長期間放置すると腎尿管などの上部尿路にも影響をきたし水腎症となり、最悪の場合は腎不全となります。
排尿症害を起こしうる薬剤には抗コリン薬、トリヘキシフエニジル(アーテン)、ビぺリデン(アキネトン)、モルヒネ、抗うつ薬、抗不安薬などがあるので、服用薬剤を確認することも重要です。
溢流性尿失禁の治療法・薬
カテーテル自己導尿
溢流性尿失禁の治療方法としてカテーテル自己導尿があります。
カテーテル自己導尿は簡単に憶えられ、間欠的に行うことで残尿をなくすことができます。一方。持続導尿は尿路感染の危険があり、腎障害がなければする必要はないです。
β遮断薬
β遮断薬は膀胱頸部や前立腺部の尿道抵抗を下げます。非選択性のウラビジル(エブランチル)は尿道平滑筋を弛緩させることにより尿道全域の内圧を低下させて排尿量を増加させます。主な副作用はめまい、立ちくらみです。
シロドシン(ユリーフ)、ナフトビジル(フリバスや)はこれらの副作用が少ないです。
副交感神経作動薬
コリンエステラーゼ阻害薬のジスチグミン(ウプレチド)は膀胱利尿筋の収縮能を増大させますが、膀胱頸部も収縮させることがあり、逆に排尿障害を悪化させるので、その場合遮断薬を併用します。
呼吸困難の発生リスクを下げるために神経因性膀胱などに対しては1日量が5mgを超えてはなりません。
抗アンドロゲン薬
クロルマジノン(プロスタ一ル)、アリルエストレノール(パ一セリン)やデュタステリド(アポルプは前立腺を縮小させる効果があります。
植物エキス製剤
セルニルトン、エビプロスタットは抗炎症作用、抗浮腫作用をもつ植物性薬剤で、副作用が少ないです。