骨盤底弛緩・性器脱による尿漏れ、尿失禁と手術

骨盤底弛緩・性器脱とは

骨盤底弛緩 性器脱

骨盤底弛緩とは、線維組織や骨格筋などによる骨盤底の支持構造が弱り、内臓の過可動性による会陰周辺の違和感や排尿障害、排便しづらさなどの機能障害を伴う状態のことです。

腹圧性尿失禁は、このなかで骨盤底弛緩に伴う尿道支持不良がおもな原因であるものはタイプ2の腹圧性尿失禁と呼ばれ、外科治療(手術)後の予後が良好であることが知られています。

また、骨盤底弛緩のなかで、膣壁が引き伸ばされて膀胱、子宮、直腸などの骨盤内臓が膣壁を破って膣内に落ち込むようになったものは、変形そのものに着目して性器脱と呼ばれます。

この段階に至ると、痛みはなくともほとんどの人がはっきりと外陰部の異物感や違和感を自覚します。また、膣前方の部分に弛緩や変形の強い場合には、膀胱と尿道の刺激症状も自覚されます。

骨盤底弛緩による尿漏れ

骨盤底弛緩 尿漏れ

軽度の骨盤底弛緩で問題になる排尿障害は、ほとんどの場合尿漏れです。骨盤底弛緩で尿道の支持が不良になった状態は腹圧性尿失禁発生の原因となるためです。

ただし、骨盤底弛緩の程度や持続期間と腹圧性尿失禁の間には明らかな相互関係がなく、歴然とした骨盤底弛緩であっても必ずしも腹圧性尿失禁を伴うとは限りません。

反対に、年齢や膀胱尿道固有の機能によっては、骨盤底弛緩と診断するほどでもない細かな尿道の過可動性が腹圧性尿失禁の原因になります。

性器脱による尿失禁、残尿、排尿困難

性器脱 尿失禁

膣内へ膣周囲の構造が落ち込んだ性器脱の状態になると、排出障害、膀胱尿道の違和感や刺激症状、それに腹圧性尿失禁が不規則に入り混じり、排尿障害は複雑になります。

自覚的な排尿しづらさ、閉塞性の排尿パターン(尿の出方が不規則)、排尿後残尿などの排出障害は、膀胱底の高い部位が膣内に落ち込んだ「真性膀胱瘤」という状態が一番顕著です。

一方、膀胱頸部や近位尿道がしっかりと支持されていない場合には、排出障害だけでなく腹圧性尿失禁を伴うことが多いです。

また、膀胱だけでなく子宮頸部がともに下降している場合や後方の会陰や肛門括約筋などに損傷や機能不全のある場合には、さらに腹圧のかかる瞬間に尿道を周囲から圧迫する力が働きにくくなり、腹圧性尿失禁が生じやすくなります。

後方の骨盤底支持の有無も腹圧のかかる尿道閉鎖能を左右しており、出産で肛門括約筋損傷を生じた経産婦では、約半数に腹圧性尿失禁が生じるといいます。

膀胱頸部と近位尿道の支持不良があって腹圧時に尿漏れがみられるような性器脱でも、経過をみているとさらに尿路の屈曲が強まって尿漏れが軽減していくことがあります。

日本人に最も一般的な子宮下垂と膣の前方の弛緩下垂の混合した性器脱では、最初に腹圧時の尿漏れが生じ、次に尿漏れがやや軽減して改善感のある時期があり、並行して子宮の下降や膀胱瘤による膣前壁の反り返りや脱出が顕著になり、だんだん排出困難が強まるという流れをたどることが多いです。

性器脱の手術

性器脱の根本的な治療は外科手術ですが、手術の後に閉塞がとれると尿漏れが現れることがあります。

中途半端な整復手術により尿道の屈曲はとれたが膀胱頸部の可動性は残されているような場合に、とくに手術後の尿漏れが起こりやすいです。

手術後の尿失禁への対策としてTVT手術などの尿失禁手術を予防的に行うこともありますが、手術から何力月かたった時点でTVT手術を追加することもできるので、失禁手術を同時に施行することも可能です。

ただし、手術後の骨盤底支持が再び不安定になると、そのまま尿失禁手術を追加することはできないので、もう一度性器脱の手術を行わなければならなくなります。

性器脱の最終的な治療

性器脱 治療

かかりつけ医に、子宮が出てきたとか膣がめくれて排尿しづらいなどといったことについて相談する女性は多いです。

性器脱の最終的な治療は外科整復で、ほとんどの場合に経膣手術の適応となります。子宮を持つ患者では、子宮頸部周囲の支持力を手直しするマンチェスター手術と骨盤底形成術を合わせて行うか、あるいは膣式子宮摘除と骨盤形成術を合わせて行います。

子宮摘除後の性器脱(膣外翻)では、通常、膣断端を仙棘靭帯など骨盤壁の堅固な構造に固定して引き上げる手術(仙棘勒帯固定術など)や骨盤底形成術が行われます。

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