子宮筋腫や子宮内膜症による尿漏れ(失禁)、頻尿の仕組みと対策方法

子宮筋腫 子宮内膜症

内性器と尿路が骨盤内で場所を取り合う関係にあること、そして、子宮と膀胱とは共通の内骨盤筋膜によって骨盤内に支持されていることにより、子宮筋腫や子宮内膜症などの子宮疾患は、しばしば頻尿や失禁などの排尿の不具合を生じる原因になります。

子宮筋腫による頻尿や尿失禁

子宮筋腫 尿失禁

骨盤腔内で子宮筋腫が腫大した場合、膀胱に対する機械的圧迫により頻尿や尿失禁などが起こることがありますが、その頻度はかなりの開きがあります。

子宮摘出手術は女性に対する手術としては帝王切開についで多いといわれ、靭帯など骨盤内支持組織の脆弱化や切断による支持機能の低下から、後年になって子宮摘出手術を受けた女性では手術を受けていない女性と比較して尿失禁の発生が多いといいます。

子宮筋腫は悪性腫瘍である子宮頸癌や体癌とは異なり、通常リンパ節郭清などは行われないですが、基靭帯中にも骨盤神経の一部は存在し、単純子宮摘出術後、とくに卵巣を含めて摘出する場合には排尿症状の頻度が増加するといわれています。

子宮筋腫の代表的な3つの症状は、出血関連の問題、疼痛(痛み)、圧迫症状とされ、時期によっては妊娠性の低下も問題になります。

排尿関連の症状はおもに圧迫や牽引などによる物理的な由来のものです。

ある程度増大した子宮が膀胱を圧迫すると頻尿、尿意切迫、尿失禁などはごく一般的に観察され、膀胱頸部の可動性を阻害する大きな子宮、とくに後屈した姿勢で重く可動性のない子宮の影響を受けると、膀胱には潜在的な排出障害があり、膀胱充満時に突発的な排尿不能を起こすことがあります。

出血や疼痛(痛み)の問題は、閉経により確実に解消に向かうのに対し、物理的影響である排尿障害には閉経後の改善傾向がはっきりしません。閉経後には子宮筋腫はやや縮小傾向となますが、年齢が上がると膀胱や尿道固有の基礎的な性能や背盤底の支持力にも衰えが生じ、子宮筋腫による圧迫や牽引などの問題を塊め合わせる余力が足りなくなります。

そのため、閉経期に排尿障害を伴う大きな子宮筋腫があった場合、そのまま放置すると後年にはむしろ排尿機能は衰えていきます。

また、高齢になってから増大した子宮を摘除すると、手術後に排尿違和感などの問題がしばしばみられます。基本的に、月経を有する女性において子宮筋腫が増大傾向であるか、または大きさがピークになった時点ですでに筋腫による排尿障害が問題化しているのであれば、子宮摘除や筋腫核出などの手術が検討されます。

子宮内膜症による頻尿や尿失禁

子宮内膜症

子宮内膜症には、骨盤腹膜や付属器周囲に病巣のある外性子宮内膜症と、子宮筋層が侵される子宮腺筋症の2つがあります。

前者では、子宮周囲の腹膜や付属器などに内膜様組織を生じ、そこから定期的な出血を伴うために慢性炎症が継続します。膀胱子宮窩腹膜にも内膜症病巣が形成されることが多いです。

また、後者では、子宮筋層に内膜組織が細かい入江のように入り込み、子宮壁の肥厚や線維性の硬化を伴います。

外性子宮内膜症では、慢性的な疼痛や癒着と硬化性の変化による子宮頸部や膀胱頸部の可動性低下が排尿機能に影響を与え、排尿時の違和感や残尿感、頻尿など膀胱刺激症状が起こることがあります。膀胱炎と異なり、尿検査では正常です。

一方、子宮腺筋症では子宮筋腫と同様に増大した子宮による圧迫や牽引が問題になることがあります。ただし、外性子宮内膜症、子宮筋腫、子宮腺筋症などは複合して生じることもあり、、外性子宮内膜症=膀胱刺激症状、腺筋症=圧迫症状、という風に当てはまるとは限りません。

子宮筋腫、子宮内膜症などで尿トラブルは婦人科へ

頻尿 子宮内膜症

子宮筋腫や子宮内膜症に関係した頻尿や尿失禁などの排尿障害が疑われる場合には、内科の診療はあまり効率がよくないといいます。

基本的には婦人科を探して受診すべきでしょう。排尿機能の面から子宮疾患を評価することは婦人科医にとってある程度経験を要する仕事ですが、婦人科診察をとばして経腹超音波検査などで骨盤内の臓器を画像化して評価することはさらに高度な技術であるうえ、得られる医学的情報には限界があるといいます。

婦人科で診察を

婦人科的な診察をしないで超音波やCTなどの情報だけから引き出された診断によって、間違った評価に振り回される女性の排尿障害患者は多いといいます。

頻尿や尿失禁を訴える女性に子宮筋腫や内膜症の疑いがあれば、とりあえず婦人科に対診すべきでしょう。婦人科で子宮疾患が見つからなかった場合、見つかったが排尿障害とは関係がないという診断を受けた場合には、排尿障害は子宮疾患と無関係と判断できます。

心配であれば、病院を受診することが一番です。

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