おしっこの量が多くなる(多尿)のには色々な原因があります。
単純に飲み物を多く摂って、水分が体内に多くあるのが理由ということもありますが、場合によっては病気が潜んでいることもあるので注意が必要です。
目次
おしっこはどれくらいの量が普通?(尿量の基準)
私たちは1日にどのくらいの尿を排尿するのでしょうか。
尿の量は体内の水分量(血液の浸透圧=血液の濃さ)を一定の範囲に維持するために腎臓が決めているのです。
それまでの体内水分量の状況、飲食物の摂取量などにより排泄される尿量は自然に決まってしまうのです。
たくさんの飲料水を飲めば、必然的に尿量は増加するのが正常ですし、飲料水の摂取量を制限すれば尿量は減少してくるのです。
からだの巧妙な仕組みには、水や電解質といわれる物質について体内に取り込まれる量と排泄される量との間にバランスがとれているという特徴があります。
摂取量というのは飲食物の中に含まれる水分量と体内の代謝により出現する代謝水という量からなり、合計すると2,100〜2,300mlとなります。排泄される量には皮膚や気道から蒸発する水分量(これは目に見えないため意識されることはない)と便あるいは尿として排泄される量からなり、合計すると2,100〜2,300mmlとなるのです。
つまり摂取量と排泄量はバランスを保っているわけです。このようにバランスを維持するために、腎臓は尿量を体内水分量の状況に応じて変化させて調節していることになります。
しかし、尿量はどこまでも少なくすることは実はできないのです。
1,000~1,500mlが正常
尿の重要な働きの1つに老廃物を排泄するという機能があります。通常の食事や体内の代謝により生じたこの代謝産物や食事から取り込まれる塩分などを尿として排泄するために、少なくとも500ml程度の水分は必要なわけです。
どうして500mlかというと、正常の腎臓であっても尿を濃くする能力(尿濃縮力)に限界があるためです。したがってこの量以下では老廃物などの溶質の排泄は十分ではないため、血液の中に蓄積することになります。
これは腎臓の働きが不良なことを意味します。腎臓に働きが不良になると、この尿濃縮力は低下するため、不要老廃物などの物質を排泄するためには、さらに水分が必要になります。
このようなことから通常の食事と飲料水を摂取している腎臟が正常な人でも、無理なく老廃物を排泄するためには一般的にし、尿量は1,000〜1,500ml程度必要であるといえます。
腎機能が不良な人は、むやみやたらと水分を飲むと体に溜まってしまうことになります。特に長期透析治療を受けている人の場合には、尿皇はせいぜいあっても200〜300mlというところですから、1日に摂取する水分は800ml程度にしておかないと次の透析までに極端に体重が増加してしまうことになります。
異常な尿量とは?
尿量:通常の食事下では800〜1,500m//日
但し、異常な腎外性の排泄・喪失時のない場合(例えば、過剰発汗、喔吐、消化液喪失など)、体液のバランスの維持により尿量が規定される。
尿量=(食物・飲料水などの水分+代謝水)‐(不感蒸泄+便中水分量)
無尿<100ml/日
多尿<2,500ml/日
乏尿<400ml/日
尿閉:膀胱内に尿の貯留があるが、排尿ができない状態
夜間尿:通常の排尿の日内変動がなく、夜間に尿量が増加する状態腎不全や前立腺肥大症などに出現
頻尿:排尿回数が多い状態。特に下部尿路感染症、前立腺肥大症に出現
多尿の原因
正常の尿量よりもはるかにたくさんの量を排泄する状態、例えば2,500〜3,000m/以上の尿量を多尿といいます。
この状態はさまざまな原因により出現します。
多飲症
心因的な問題、ストレスや精神的に異常な状態にある場合には、異常な水分量を摂取することがあります。
特別にのどが渴いているわけでもないのに、日に4〜6Lも摂取するような状態です。
これは心因性の多飲症といわれますが、この場合には尿は4〜5Lに及ぶことになります。1回の尿量も多いし、排尿回数も多くなります。それこそ1日中卜イレ通いというような状況になってしまいます。
尿も薄い水のような尿(希釈尿)を排泄することになります。この病気は病名からわかるとおり、精神的あるいは心理的な問題点がある患者、特に女性に多いようです。
心理的あるいは精神的なス卜レスなどの問題を抱えめんでいることが原因ですから、治療は精神科的な助けを必要とします。
尿崩症
多尿を示す病気にはこのほかに尿崩症という疾患があります。
この病気でも尿量は1日に4〜5L以上出ますが、心因性の多飲症とは違ったメカニズムにより出現することになります。
これはなんらかの原因により脳の中の視床下部あぬしは脳下垂体から抗利尿ホルモンが産生または分泌されないという疾患です。
この抗利尿ホルモン(バゾブレシン)は腎臓の集合管で尿を濃縮する作用があるホルモンです。
このホルモンが分泌されないと、尿は薄い尿となり、尿量が多くなります。
また、たとえ抗利尿ホルモンが分泌されていても、このホルモンが作用すべき腎臓の集合管で作用しなければ同じことになります。
つまり、なんらかの原因により腎臓の尿細管から集合管にかけて異常があると、このホルモンが作用しなくなれば尿崩症の病態を出現させることになるわけです。この状態を特に腎性尿崩症といい、本来の尿崩症を中枢性尿崩症と区別することがでぎます。
このような状況で、もしも水分を摂取しないとすると、尿は濃縮されずに排泄され、水分を失ろことになります。
この結果、血液の浸透圧は次第に濃縮され、からだの中の水分は減少してしまい脱水症になってしまいます。
正常の状態であれば、脱水症のために血液の浸透圧は上昇し、当然のどの渴きを感じるようになり、水分が手に入る環境であれば、脱水症を避けるために水分を捕給することになるわけです。この多尿による脱水症を防止するためにたくさんの水分を摂取することになり、多尿と多飲の悪循環に陥ることになります。
先に述べた心因性の多飲症ではたくさんの尿が出るのは水をたくさん飲むためであり、尿崩症では尿がたくさん出るために、脱水症を防止するためにたくさんの水分を補給するために多飲するという違いがあるわけです。
尿がたくさん出るといっても安心していられないわけです。もちろん1日に3/以上も出れば異常であるとわかりますが、このような多尿の場合に注意しなければならないのです。
このような大きな原因が隠されているという点から尿量をチェックする必要があります。
多尿の原因
原因1 水分利尿 |
1)水分摂取量の増加 飲料水摂取量の増加 点滴負荷量の増加 心因性多飲症 2)濾過水分の再吸収障害 中枢性尿崩症(ADHの欠如) 腎性尿崩症(ADH反応性の欠如)
|
原因2 浸透圧利尿 |
糖尿病 慢性腎不全(多尿期) 急性腎不全(利尿期) 利尿薬(ル一プ利尿薬)の投与 マンニ卜一ル投与 |
心因性多飲症や尿崩症ほどの大量の尿が出るわけではありませんが、多尿を示す疾患には糖尿病や末期腎不全があります。
糖尿病が原因の多尿
糖尿病では血液の中の糖濃度が著しく高いために、腎臓において浸透圧利尿作用により水分が糖の排泄に伴う浸透圧利尿て引っ張られて排泄されることによります。
これを浸透圧利尿といいます。
この結果、体内の水分が喪失するために、のどが渴き、水分をたくさん摂取することになるわけです。
糖尿病では多飲多食という症状が有名ですが、水分をたくさん摂取する理由は尿中に強制的に水分を喪失する結果、体内の水分を補給する意味があるわけです。血糖のコン卜ロ—ルをすることにより、多尿は軽減〜消失することになります。
腎臓病が原因の多尿
腎臓の働きが悪くなっても、尿量は多くなります。特に慢性腎不全が原因で多尿を示します。この理由はいくつか考えられています。
腎機能か悪いために体内に尿素窒素などの老廃物が蓄積することになります。このためこのような物質を排泄するための尿量が必要なわけですが、尿を濃くするという働きが次第に低下してくるために、水分がそれだけ必要になります。
尿素などか糖尿と同じように、浸透圧利尿として作用するかも知れません。
また、昼間に排尿が多く、夜間には少ないという日内リズム現象がなくなるといつことも関係するとされています。
この排尿の日内変動が逆転すると、夜間に排尿が増えるということになり、夜間多尿は腎不全の1つの特徴になります。
このような夜間尿に加えて、腎不全の末期には、尿は血液と同じ程度の濃さである、等張尿というのが特徴です。
これは腎機能の中で尿を濃くする働き(尿濃縮力)や、尿を薄める働き(尿希釈力)がなくなってしまうためです。
おしっこの量が以上に多いと感じたら
以上のように、多尿というのはさまざまな原因により出現しますか、単純に飲水量を増やしたために尿量が増加するというのではなく、1日の尿量か2,500m/以上にもなるような場合には、明らかに異常です。
尿量が多いからといっても、腎臓の働きは必ずしも良好なわけではないということを肝に銘じましょう。そこには病気が潜んでいる可能性もあるのです。
このようなときには、医療機関を受診して、原因を解明することが大切になります。
尿の量を減らすにはまず生活習慣を改めよう
普通の生活をしている人は、前述のように通常1日合計1500〜3000gの水を体外に排出します。内訳は、尿や便から1000〜2000mg、汗など体表から蒸発する分が500〜1000mgです。
一方、入ってくる水分の量はまず食事など食物中の水分からとるのが500mg、代謝水(食物を分解するときなどに体内でつくられる水)が約500mgです。残り 1000〜1500mgの飲水量が あれば、おおよそOKということになります。
ところが、中には水の過剰摂取で頻尿になっている人がいます。
習慣的に水分摂取をしていたのなら、まず本当にのどが渴いたと感じたときを中心に水分を摂取するように心がけ、1日の飲水量を1500mg程度に抑え、排尿パターンに変化が起こるか確かめてみてください。それで症状が改善できれば、水分調整を自然にできるように習慣化すればよいのです。
塩分の摂りすぎも原因の一つ
また、特に暑くもない季節でふつうの運動量のとき、1日1500mgの水分をとりながら、とてものどが渴いてしかたないときは、塩分をとりすぎていないかチェックします。
のどの渇きが塩分の摂りすぎのせいかもしれません。
塩分も適正なのに、のどが渴くという場合はホルモン異常が隠れている心配もあるので、できるだけ早く医療機関を受診したほうがよいでしよう。
水分と尿トラブルの関係
さて、尿トラブルの解消に限らず、健康を維持するために大切なのは、摂取する水分の量と、排出される水分量を適正に保つことです。
スポーツをして多量の汗をかいたら失った分だけ補給するのはもちろん大切ですが、それは水分代謝が適切に働いていることが前提になります。多くとりすぎた水分が尿や便として排泄されるためには、体内の水がスムーズに循環していることが必要になります。
たとえば、お酒を飲んだ翌朝、顔がひどくむくんだという経験のある人も多いかと思います。これも水分代謝つまり「入る、出る」のバランスがくずれ、体内に余分な水がたまったからです。
水分がたまると冷えが起きる
漢方ではこうしたみず(漢方では透明な体液の総称です)の流れが鈍って、ある特定の部位にたまってしまうことが病気のひとつの原因と考えます。
また、水が体内にとどまってしまうのが 「冷え」の原因のひとつともされています。水がスムーズに循環しなければ体は冷える、体が冷えればさらに水はスムーズに循環しにくくなるのです。
実際、尿トラブルを抱える人は 手足が冷たいなど体の冷えを自覚していることが多いのです。
病気ではなく、ただ単に水のとりすぎ、塩分のとりすぎ、冷えなどが原因で尿量が多くなっていることも非常に多いので、そんな場合は自身の生活習慣を改めることで尿量を調節することも可能です。