尿の量は体内の水分状況により変化しますが、アルコールを摂取した後とか、緊張したときや寒いときにも尿意を感じることが多くなります。
例えば、試験の前とか、重要な人と会わなければならないようなときなども、その前にトイレに行きたくなるものです。
特別に膀胱内に尿がたくさん溜まっているわけでもないのに、不思議と卜イレが近くなるのです。
アルコールの利尿効果
夏が近づくにつれて、ビルの屋上では即席のビアガーデンの準備が始まります。最近では女性もビールを愛好する人が増えてきています。
ビールを飲んでいると、液体の量そのものが多いことも関係するのですが、アルコールによる影響からトイレ通いが頻繁になります。このため本当のアルコール好きな人は、却ってビールよりもアルコール濃度の高いウイスキーや冷酒の方を好むことになります。
しかしながら、コップ1杯のビールの喉越しのうまさは格別であることには、誰も異論はありません。
このようにアルコールを摂取すると、どうして卜イレが近くなるのでしょうか。ビールの場合にはお腹にもたれると言われるように、水分量が多くなるため、一種の水分負荷という状態になり、過剰の水分を排泄するという作用が認められることになります。
ところが、これだけの問題で尿量が増えるというのではありません。アルコールにより心臓がドキドキして血液の流れが活発になり、腎臓へいく血液の量が増加することも関係するかも知れませんが、どうもアルコ一ルと抗利尿ホルモンとの関係を考えないと難しいのです。
アルコ一ルと抗利尿ホルモン(ADH)の関係
このホルモン(バゾブレシン、ADHとも略されます)を刺激したり、抑制したりする因子はさまざまあります。
ADHの分泌を抑制する因子の中で最も重要なものは、血液の浸透圧の低下あるいは血液量の増加があります。
それ以外にも低温環境あるいは各種薬物の影響があります。血圧を上げる作用のある副腎髄質から出るノルエビネフリンあるいは少量のモルヒネなどもそうですが、アルコールにもADHの分泌を抑制する作用のあることが知られています。
つまりアルコールは薬理的な作用によりADHの分泌を抑制することにより、腎臓の遠位部において水分の再吸収を減少させるため、尿量を増加することになります。
このためアルコール利尿という状態になるわけです。ところが人によっては、このアルコール利尿の反応が乏しい人もいます。このような利尿作用については単純ではないようです。
寒いときに尿が出やすい理由
寒いときに利尿になりやすいというのもこのADHの分泌に関係かあると考えることができます。
寒冷の環境により、ADHの分泌は抑制されるからです。しかしながら、寒冷環境では手足が冷たくなって末梢循環は悪くなり、また発汗などによる水分の喪失はないために体内に水分が貯留する傾向にあります。このことはさらにADH分泌を抑制することになり、利尿反応を増す因子でもあります。このような因子の総合的な結果、寒いときには尿が多くなるというわけです。
お茶やコーヒーなどのカフェイン飲料と利尿作用
尿が多くなること(利尿作用)に関係のある飲料水というと、お茶やコーヒーなどのカフェイン飲料が有名です。
このような飲み物がどうして利尿作用を示すかという理由は、テオフィリンやカフェインに関係があると思われます。お茶をたくさん服用すると、アルコールと同じように水分の負荷になります。
しかし、単純に水分負荷とは異なり、それ以上の利尿反応が生じることになります。これはお茶の成分が腎臓へいく血液量を増し、濾過作用が増すことと関係があるからです。
もしも腎機能が低下している状態において、十分な利尿を確保するためには利尿薬を使用せざるを得ません。
スイカや降圧薬も
昔の人は腎臓が悪くなり、むくみが出現するようになるとスイ力を食べさせ、おしっこの出をよくしようとしたものです。スイ力の中には利尿作用を有する成分があるのかも知れませんか、むしろスイカには水分負荷という意味も大きかったのではないでしょうか。現在は直接的に利尿作用を促進させる有効な薬がたくさんあります。
利尿薬には、その作用メカニズムの違いにより、いくつかの種類があります。
もっともポピュラーな薬はサイアサイド系の利尿薬です。これは一昔前には、高血圧薬としてよく使われました。高血圧の原因も、体内に過剰に塩分が貯留して生ずることが関係しますから、このような降圧利尿薬により尿中に過剰な塩分の排泄を促進させることが良いわけです。
現在ではもっと別の作用機序な降圧薬がありますから、このサイアザイド系の利尿薬はあまり使用されなくなっています。
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