正常圧水頭症の症状と頻尿、失禁・尿漏れ

尿トラブルを引き起こす病気

正常圧水頭症とは

正常圧水頭症は意外と有病率が高いので見逃してはいけない病気です。

数でいうと人ロ10万人あたり、アルツハイマー型認知症の患者が1000人程度、パーキンソン病の患者が100人から150人、特発性正常圧水頭症の患者さんが250人くらいというから、アルツハイマー型認知症とパーキンソン病の間くらいの有病率ということになります。

正常圧水頭症は、治療でよくなる認知症として、最近マスコミでもよく取り上けられるようになってきました。

正常圧水頭症は歩行障害、認知症、尿失禁の3つの症状かそろったとき強く疑われます。

人間の脳の中には、脳室というリンパ液に近い髄液が入っている空洞(小部屋)があります。その脳室の壁に、脈絡叢という組織があって、そこで1日500㎖くらいの髄液が作られます。作られた髄液は、脳室からくも膜下腔を経て大脳の静脈まで流れ、循環しているので、脳室・脳・脊髄の外表を満たしている髄液は、約150㎖くらいといわれています。

実は、特発性正常圧水頭症の原因はよくわかっていません。髄液の循環や吸収が悪くなり、髄液が脳室にたまって脳室が大きくなり脳が圧迫されることで起こることは突き止められてます。

正常圧水頭症の症状

ふつう最初に起こる症状は歩行障害です。

「歩くときのバランスが悪くなった」「方向転換するとき、くらっとする」「階段で足元が怖い」などがあります。歩くときは外股でやや開き気味、歩幅は小さく小刻みにちょこちょこ歩き、足が上がらず、すり足でチョコチョコ歩きというのが特徴的です。

認知症はぼーっとしているのが特徴で、アルツハイマー病に比べ、物忘れ、強い記憶障害は起こしません。意欲や自発性の低下が目立ちます。

正常圧水頭症と頻尿、失禁・尿漏れ

排尿障害は歩行障害や認知症状に遅れて出てくきます。

尿意をコン卜ロールするのがむずかしくなり、トィレに行く前にもらしてしまったり、がまんできる時間が短くなって頻尿になったりします。いわゆる切迫性尿失禁になることが多いです。

尿失禁の前に夜間頻尿という形で自覚症状が出てくることもあります。

脳のMRIなどの画像から正常圧水頭症が強く疑われれば、腰に針を刺して髄液を30㎖くらい抜きます。それで症状が改善するようなら、脳外科で過剰にたまった髄液を脳室から腹腔に細いチューブで流したり、腰椎のくも膜下腔から腹腔へ流したりする手術(シャン卜術とよばれています)をすることになります。

正常圧水頭症は高齢者に多く、認知症患者の5〜10%を占めます。手術で30%くらいの人がよくなるといいます。老化現象だからしかたないとあきらめて見過ごさないことが大切です。

手すりにつかまっても歩けなかつたのが自力で歩けるようになったり、1日中ぼんやりしていた人に笑顔が出て、普通に会話ができるようになったり、尿失禁の回数が減って、おむつがはずせるようになったりと、手術でよくなった人にはその変化が大きいです。

適応があれば80歳や90歳の高齢者でも手術は可能といいます。

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